2010/03/29

過疎地域は日本の縮図である

地方では、過疎化や少子高齢化が問題になっている。
特に限界集落と呼ばれるところは地域社会(共同体)の維持すら厳しい。
そもそも何が問題なのかと考えると、人口減少している地域の社会設計が最大時の人口に基づいて考えられているからではないだろうか。

例えば、人口1万人の町があり、それに応じた地域社会がつくられる。行政や産業などを含めた。
それがなんらかの理由により、人口が半分になったとする。
そうなると、行政や産業の一人当たりのコストが二倍になる(あくまでモデル計算として)
企業であれば、商圏人口が半分になれば、持続不可能となり、撤退(廃業)するところもあるだろう。
しかし、自治体などは職員を半分解雇!などできるはずもない。
インフラコストも同じである。

ヒトのためにつくられた社会を維持するためにヒトが必要になっている。
なんとも奇妙な状況である。

過疎化は、地方都市への人口移動によって解決できる。
道州レベルや県レベルで、地方の中核都市をつくり、そこに人口を集中させる。
しかし、それではその土地の文化や伝統工芸、第一次産業などを失ってしまう。
ただ現状のまま行けば、それらはどちらにしろ無くなっていくだろう。では、どうすべきか?
過疎地域を最低限、持続可能な経済規模(人口)にする。人口動態の設計が重要になってくる。

実際に過疎地域に行ってみて考えたところ、若い世代が過疎地域に住む上でのボトルネックは、仕事がない、教育環境が整っていない、が大きな要因だと感じた。
仕事に関して、主な産業である農・漁・林業の高付加価値化や新しい産業である観光・サービス産業の創出が必要だといえる。
また若い世代が子どもを育てる際、教育環境は大事になる。簡単に言えば、学力向上のための教育サービスがあるかどうかである。

まず、公教育である学校について。クラスどころか全校で数十人レベル。
そうなると、子どもにライバルがいない、教員が多学年を担当するためカバーしきれないという状況になる。
次に、民間の学習塾などについて。人口が少なすぎてビジネスとして成立しない。
第一次産業の家庭は教育支出が少ないため、顧客獲得が難しい。
一方で、教育意識の高い親は子どもを他地域に進学させ、少子化が加速される。
【参考】:親の年収が進学率に影響、教育格差拡がる。人づくりは社会全体で取り組むべき課題


教育に関して、第三の教育が必要なのかもしれないと感じる。公でも民でもなく。
顧客(子どもと親)にとって、ローコストで、少人数を対象に、必要な教育を提供するシステム。
ふと思ったのは、Teach For America のようなカタチが適切なのかもしれない。
【参考】:いつか、すべての子供たちに――「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと

また、日本の成功事例で言えば、大分県高田市の”学びの21世紀塾”が参考になる。
【参考】:「ガイアの夜明け」 2月23日放送 第405回 攻防!教育マネー~“格差時代”を生き抜く~

ただ、田舎暮らしは再考され、価値が見出だされつつある。
家は田舎で、仕事は都市という職住分離型の生活である。
しかし、その生活をするには、その都市と田舎のインフラが整っていることが必要である。
ヨーロッパでは、格安飛行機(LCC)を通勤に使い、パリで働き、ど田舎に家を持ち、子どもを育てるというライフスタイルがあるそうだ。月曜出勤、金曜帰宅であったり。(テレビの格安ジェット特集で見た)
【参考】:地域活性化に向けた地方空港の現状とLCCの必要性について(PDF)

戻って過疎化について考える。過疎になると、医療、消防、警察などの公的サービスが必要時に提供されない可能性が高くなってくる。また、中山間地域などは道路幅など制限があるため、余計にサービスを悪化させる。緊急時などは人命に関わってくるので、非常に問題である。

しかし、過疎地の自治体には資金余力がない。さらに資金の使い方も疑問符がつく。公的サービスを維持すると、借金漬けになってしまう。なので、とりあえず合併するという動きが生まれる。
行政と住民が揉める原発や産廃処理場を受け入れは、過疎地にとっては苦肉の策なのだとつくづく感じる。

と色々と考えてきたが、日本の大部分は田舎で、さらに過疎地域なんて数えられないほどある。
どの地域も地域ブランディングして、グリーンツーリズムで活性化!なんてのは無理なわけである。
やはり歴史を閉じる地域が出てくると思う。

では、どうするんだ?という訳で、過疎地域を生かすには、人が絶対に必要。
子どもを増やすか、移民を連れてくるか、人口過剰地域の人口を分散させるか。
こうなってくると、過疎地域をどうするかという問いは、日本をどうするかに等しいテーマだと気づく。

国をどうデザインするか。
ひとつは子どもを生み、育てやすい社会にするということがあげられる。
日本全体で見た場合、出生率は下がっているが、個別に見れば高い地域もある。
その要因を見ていくことが、子育てしやすい社会へのヒントとなるかもしれない。
【参考】:少子化対策の現状と課題 市区町村別にみた合計特殊出生率

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