デザインに辿り着くまで
最近、デザインという言葉をよく使うようになってきた。それに伴い、デザインという行為を考える機会も増えた。
僕はデザイナーではないのだけど、デザインされたものが好きだし、
デザインというものの可能性やデザインする際の考え方に興味がある。
原点をたどると、図画工作は小さな頃から得意だったし、
絵を見たり、写真を見たり、アートを見たり、
そういったことが無意識に好きだったのかもしれない。
しかし、それを専門に学ぼうとか、デザイナーになろうとか
微塵も考えていなかった。
大学生の頃、「コミュニケーションをデザインするための本」を読み、脳天に衝撃が走った。
デザインは有形だけでなく無形のものをも対象にすること、デザインとは課題解決であることを教えてもらった。
その頃、パワーポイントで資料をつくって発表することが多く、情報整理と情報表現についてよく考えていた。
考えていたのは、「何を言いたいのか」と「どう伝えるのか」という二つの問い。
先輩から「何が言いたいのかわからない」と詰められ、メッセージについて
悩んだり詰まったり修正したりしたのは、今となっては良い思い出である。
一方で、どう伝えるのかという手段は、「言語と絵で構成するしかない」と当時は思っていた。
見やすいグラフをつくるだけでも、レイアウトや色、トーンなどに気をつける必要がある。
しかし、それに力を入れすぎて、“かっこいいだけ”の資料をつくったこともしばしば。
本末転倒ではあるが、おかげでパワポ作成はかなり速くなった。
その経験もあり、伝わるということについて意識するようになった。
2人の言葉
あるデザイナーの方から「赤星さんはデザイナー的な考え方をしている」と言われたことがある。
論理的に考えたり、課題を解決するために何かを考えたりすることがデザイナーに近いということだった。
話を聞いていくと、デザインのプロセスは非常にロジカルであり、
一定の法則やパターンに則っていることがわかった。とても面白い。
またデザイナーをしている友人から「デザインする前に考えること」の話を聞いた事があり、
“プレ”(〜の前に)の大切さを語られた記憶が強く残っている。
この2つからプレデザイン、デザインする前に意識する事を思い出した。
何であれ課題を知らなければ、解決できない。
クライアントやユーザーを知らなければ、課題を理解できない。
課題解決としてのデザイン
デザインは課題解決の手法である。デザインを頼むクライアントがいて、伝える対象となるユーザーがいる。
その二者間をつなぐのが、コミュニケーションという解決策。
しかし、改めて考えると、
(クライアントが)伝えたいことは(ユーザーが)知りたいこととイコールではない。
“伝えたいことが伝わるように”考えたとしても、必ずしも成果につながる訳でない。
そもそも依頼するクライアントの視点と利用するユーザーの視点は異なる。
両者のギャップを埋め、コミュニケーションをつなぐ翻訳者のような役割が求められる。
実際にクライアントとユーザーの属性が全く違う場合、同じ日本語を話していても使用言語が異なるだろう。
言葉に込められてた意味や使い方、時間感覚、環境、ほとんど全てが違うだろう。
だから、課題を掴むためによく知る必要がある。
そして、難しいのは言葉が必ずしも真実を表していないこと。
ユーザーは自身のニーズを完全に理解していないし、理解していたとしても正しく言語化できるわけでもない。
それはクライアントの方も同じだろう。
つまり、客観的な位置から客観視だけでなく、主体的な事実に迫っていかなければならない。
観察すべきは、行動であり、言葉と照らし合わせて、事実を把握していかなければならない。
出来事の水面下には、パターン、構造、メンタルモデルといった違うシステムが機能している。
デザイナー以外がデザインを知る必要性
デザインの対象となる領域が大きくなってきた。というよりも、本来デザイナーは対象を絞っていなかったが、
その考え方や思想がデザイナー以外にも広がっているといった方が適切かもしれない。
例えば、ウェブサービス1つ取っても、デザイン面での進化が著しい。
聞いた話だが、バックエンドの負担が減った分、フロントエンド、
つまりユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスに力を入れ始めた結果だそう。
デザイン思考も近年急激に広まり、ITによるコストダウンでプロトタイプの作成が容易になり始めた。
そして、最近3Dプリンター(スキャナー)に注目が集まっている。
Wiredのクリス・アンダーソンが出した「MAKERS」や
彼が3D RoboticsのCEOに専念するというニュースが記憶に新しい。
「デザイン」がビジネスパーソンの基礎スキルにカウントされるのは、遠くない未来かもしれない。
デザイナーがデザイン以外を知る必要性
どんな仕事でも、単純作業は代替可能で、付加価値が低くなっていく。クライアントやディレクターから言われるままにデザインして、
それを修正して繰り返すだけでは成長しづらいだろうし、いつ他にとって替わられるかわからない。
デザイン実務だけでなく、なぜそういうデザインにすべきかを明確にしたり、背景を理解したりする必要がある。
それにアイデアについても、制作に寄った発想よりも、ユーザーの視点に立ったアイデアや他業界の知識や見方が役に立つかもしれない。
優れた和食は優れた洋食からも学べるだろう。
デザイナーは世界を広げ、自分を高める必要がある。
もちろん、デザイナー以外も。
デザインの効果
とはいえ、結局デザインって何だろう?たどり着いた答えは、行動変容を促すという役割だった。
例えば、チラシであれば、それを見て買う/来店する。
プロダクトであれば、それを手に取る/使ってみる。
建物であれば、入ってみる/過ごす/使ってみる。
情報を提供しただけでは意味がなく、
その後受け手がどんな行動を起こすかまで設計する必要がある。
モノでも、それを使ってもらわないと意味がない。
買ってもらえれば売上という数値は上がるが、使ってもらわないとその後に続かない。
意図した行動を起こしてもらうこと。
そのためには、使う仕組みや仕掛けも大事だが、気持ちを動かさないといけない。
デザインはそのスイッチだと思う。
という感じで、デザイン以前を考える今日この頃です。
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